企業における新規事業や設備投資決定など、重要な投資決定の権限を社内の事業部門に大幅に与えている会社では、事業部門ごとに社内的な資本金を設定し、また本社が社内の事業部から使用資本に対して利息を取るような会社が日本で最近増えている。これが社内分社制とか社内カンパニィ制と呼ばれている。このようなシステムは欧米には全くないので欧米では研究もされておらず、このような日本企業の独自なシステムを研究することは、まさに世界的にみて「萌芽的」な研究である。 この研究は平成10年度・11年度・12年度にまたがる。 平成10年度は、最近の文献の研究を行うとともに、日本で事業部貸借対照表を作成して社内資本金制度や社内金利制度を採用している主要な会社を訪問調査した。特に松下電器産業株式会社のケーススタディを詳しく行いその成果をモノグラフにまとめた。また日本会計研究学会の統一論題でも、「事業別の財務管理システムの研究における管理会計と財務会計の交流」というテーマで研究報告した。その成果は「管理会計研究のパラダイムシフト:分権的組織の管理会計研究の新しいパラダイム」という論文として雑誌「会計」第155巻第2号に公刊した。 平成11年度は、両制度に関する理論仮説を作成して、これを検証するためにわが国企業に質問表調査をし、その結果を統計的に分析して海外の学術誌に投稿する。あわせて、私の主宰する研究グループのプロジェクト「組織デザインと管理会計システム」を立ち上げ、その中のひとつの重要な柱として本研究のテーマを設定する。 平成12年度は、平成11年度に海外の学術誌に投稿した論文の刊行がなり、これと同時に私の主宰する研究グループのプロジェクト「組織デザインと管理会計システム」の研究成果を書物の形で刊行する。
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