研究概要 |
コンパクト・ハウスドルフ空間の量子化がC^*-環であり,測度空間の量子化がフォン・ノイマン環であるとするならば,組み合わせ論的な有限幾何の量子化とは何かを探ろうというのが,この研究の目的である。群の量子化なら,それは量子群だというようにすでに定式化されている。しかしこの研究の対象である有限幾何の量子化については,決定的なものはもちろんのこと,その候補となるものさえ,はっきりしない。そこで今回の研究ではその糸口をえるために次の2つの視点からの研究を試みた。1つは部分因子環の視点で,もう1つは非可換微分幾何の視点である。それらを具体的に記してみよう。 (1)ジョーンズの部分因子環の理論の設定で,可換図式をなす中間因子環達の組を調べてみた。全体が可換な有限次元のフォン・ノイマン環ならちょうどこれは,ラテン方陣を使っての有限射影幾何の研究に対応する。これはおもしろい例の構成が困難で,いくつかの興味ある場合にのみ例の構成に成功した。 (2)コンヌの非可換微分幾何のように,ベクトル束の代わりに作用素環上の双加群をとりあつかう。双加群たちがつくるテンソルカテゴリーは非常に強力である。その構造を使って接続を調べようとしたが難しい。
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