研究概要 |
まず弾性波動方程式それ自身を熱方程式に摂動し,その挙動を調べた.しかし,その形では非線型項の影響が大きすぎて解の存在を示すことは出来なかった.そこで,実施計画の考え方に従って,方程式を球面上でのそれに書き直してから熱方程式に摂動した.その結果,解の存在を数学的に示すことが出来た. また,この弾性波動方程式において抵抗係数を無限大にもっていった場合の解の挙動を解析し,それが弾性熱方程式の解に収束することを示すことができた. この証明においては,実施計画通り,偏微分方程式を微分幾何学的方程式に書き直すという点が本質的であった.それと同値な変形は原理的には微分幾何学を用いなくとも可能であるが,実際上は困難であると考えられる.微分幾何学的な変形によって計画が達成されたということは,所期の目的通り,幾何学的考察の有用性を示している. しかしながら,微分幾何学的変形が何故有効であるか,変形された方程式の幾何学的意味は何かということについての分析はまだ不十分である.
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