研究概要 |
平成11年度は本科研費の援助のもとで合計12件の研究発表と研究打ち合わせ国内出張を行った.そのうち7件は研究代表者による出張,5件が他の研究者への出張依頼である.以上の研究活動へのサポートを感謝する.この研究課題に関連して平成11年度には次の進展があった. 情報幾何の観点に基づく凸最適化問題の内点アルゴリズムの研究を継続し,前年度に定式化された対称な正定値行列の空間上の互いに双対な測地線上を交互にたどり,初期値の平方根行列に2次収束するアルゴリズム(算術調和平均のアルゴリズム)を詳しく考察した.保存料を用いてアルゴリズムの漸化式を変形すれば既知の算法である平方根行列計算のヘロンの漸化式が導かれるが,ヒルベルト行列など条件数の大きな行列に対しては,ヘロンの方法では誤差の蓄積による数値不安定性が現れるのに比して,算術調和平均のアルゴリズムは数値安定に平方根行列に収束することを確認した.また,算術調和平均のアルゴリズムを拡張して,立方根を計算する新しい2次収束アルゴリズムや重みつき算術調和平均のアルゴリズムを定式化した.これらの検討は次年度の課題である.
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