研究概要 |
本課題では,今年度は,電磁場を持つ2乗根のワイル量子化相対論的ハミルトニアンについて,質量mを零にとばす極限の問題を考えた. 作用素論的には,既に,論文(Note di Matematica,Vol.12.1992)で扱ったが,経路積分的・確率論的な方法に前から興味があった.このハミルトニアンに対する虚数時間シュレーディンガー方程式の解の経路積分表示は,右連続左極限を持つ経路の空間上の確率測度を用いて,滑らかなベクトル・スカラーポテンシャルを持つ場合の論文(Commun.Math.Phys.Vol.105.1986.田村博志と共著)を経て,論文(Differential Equations and Mathematical Physics,International Press,pp.13-17.1995)において一般のベクトル・スカラーポテンシャルを持つ場合に確立し完成した.この経路積分表示を用いた質量を零にとばす極限の問題は,笠原勇二・渡辺信三(J.Math.Soc.Japan.Vol.38.1986)が研究したpoint processの極限定理とも関連し,彼等の結果には含まれてはいないが,point processのより複雑な汎関数の場合の典型的な例を与えている.質量mの場合の確率測度による経路積分表示を,質量零の場合の確率測度によって表示し直すことにより,この問題の解決に大ざっぱではあるがほぼ近づいたのではないかと思っている.いずれ論文を準備したいと思う.
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