研究概要 |
餌xと捕食者yとの個体数変動を示す捕食者・被食者モデルとして,Lotka-Volterra方程式が有名である。このモデルでは,捕食者が餌を摂取する速度は餌の数と捕食者数の積xyに比例すると仮定する。しかし,餌が過剰なときには,捕食速度は餌の量とともに増加するものの,食べきれなくなって飽和状態になると考える方が自然である。このことを考慮して,単位個体当たりの捕食速度を1-e^<-bx>(b>0)としたものがIvlev型捕食者・被食者モデルである。このモデルにリミットサイクルが唯一つ存在するための必要十分条件を与えた(J.Math.Anal.Appl.,217(1998),349-371)。 捕食速度の飽和状態を考慮した別のモデルに,捕食速度をx^P/(a+x^P)と仮定するHolling型捕食者・被食者モデルがある。これらのモデルはある変数変換を行えば,非線形振動の研究によく現れるLienard方程式に書き直せる。この微分方程式の零解が大域的漸近安定になるための必要十分条件を与えた(J.Math.Anal.Appl.,219(1998),140-164)。 また,この結果に関連して,Holling型モデルにおける,平衡点の大域的漸近安定性及びリミットサイクル一意性について研究した(Nonlinear Anal.及びQuart.Appl.Math.に掲載決定済)。 さらに,餌xがロジスティック則で増加し,捕食者によって食われて減少するとともに,単位時間内に一定の割合が生態系に放たれる場合(例えば,餌となる小魚を養殖して,川に放流する)を考え,生態系外から逐次補充される影響がリミットサイクルの出現・消滅(ホップ分岐)にどのような影響を与えるかについて調べた。現在,投稿準備中である。 時間遅れが生態系モデルに及ぼす影響を考察する基礎研究として,今年度は,時間遅れをもつ変数係数の線形微分方程式の零解の指数漸近安定性と中立型積分微分方程式の周期解についてまとめた(Diff.Integ.Eq.,11(1998),263-278及びFunk.Ekvac.,41(1998),327-336)。
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