研究概要 |
1)過剰虹の発生と撮影(数理科学的解析のための資料の作成). 夏にイギリスに行く機会があり,自然現象としての過剰虹を実際に,カメラとビデオ・カメラで撮影できた.人工虹スクリーンにより,虹が楕円から双曲線に変化する様子も撮影した.また、ペリーらの論文にあるカスプ状の過剰虹の発生実験についても,滑らかな凹凸のあるガラスに単一6本のマグランプの光を照射して追試できた.ただし,バルブ撮影時間は彼らより短くできたが対称軸に現れるはずの暗線は確認できなかった. 2)視覚教材の作成.長谷川道理子氏が「科学の目 科学のこころ」(岩波新書623(1999))の中に「牧場の地面に降りた虹」と題して,牧草地に朝露が降りそこに太陽光が注ぐ時に見えた虹のことが書いてある.元々は雑誌「科学」に連載されたエッセイの一つとして書かれ,この現象の説明を読者に求めたところ寄稿がいくつかあり,その一つも収録されている.その説明はおよそ良いのだが,そこに使われている曲線の呼称が数学的には適切でない.一般読者を想定して「放物線状」という言葉を用いたそうだが,これは正しくは,(切断面の連続性に注意すると)すべての色について(軸のとても長い)楕円か,一つの色だけ放物線で他の色は楕円か双曲線かどちらか,すべての色について双曲線か,のいずれかである.都ではこの種の虹は見られないだろうが,人工虹スクリーンを使えば,(虹の全体は見えないが)容易に曲の変化を見ることができ,そのようなことも含めて「虹にまつわる数学-虹曲線は二次曲線」という小論を書いた.この中で,人工虹スクリーンによる点光源の虹についても触れた.これはトーラスの切断面となり4次曲線(二つの2次曲線に分解することもあるが)であるが,Mathematicaにより切断面を描かせ断面の変化が見られるようにできた.教材の充実さらにハイパー・テキスト化を次年度行う予定である.
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