擬共型変換で不変であるような非線形Schrodinger方程式の爆発解の爆発時刻付近の漸近挙動の数学的解析を行った。爆発時刻付近での解の漸近展開第一項は非線形Schrodinger方程式それ自身の“零エネルギー"零運動量"をもつ(有界な)“時間大域解"を相似変換して得られる“有限個の特異点"の重ね合わせで記述され、また漸近展開第二項目以降は、まだ“干渉性"を持ったた自由Schrodinger方程式の解を用いて表現できることが分かった。さらに、この事実より解の絶対値の自乗は爆発時刻においてDirac測度的特異点を持つことを示すことができる。また漸近展開第二項目以降には数値実験等により予測されていた“肩"と呼ばれる“非特異"な部分が、一般的に現れることが証明できた。 この特異点の有限性と“干渉性"を持った“肩"の存在は、非相対論的場の量子論の「おもちゃのモデル」としての非線形Schrodinger方程式の可能性を示している。「mesoscopic系とは何か」という問題に対する数学的解決の糸口が得られたのではないかと考えている。 極限においてDirac測度を与える特異点の卵達の運動を記述する古典力学系の存在の探究のためには、Nelsondiffusionのアイデアに倣い、非線形Schrodinger方程式の解に対応する拡散過程を考えることが有効なようである。実際、数値実験や発見的なな議論で予想されているような“爆発のrate"を仮定すると、より精密な爆発の漸近挙動を得ることができる。 今後は、確率論的手法の可能性を模索しながら、非線形Schrodinger方程式に対応する古典力学系の存在を探究し、数学的には未解決である“爆発のrate"の証明も目指したい。
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