この研究課題の許での研究の成果として、第一に挙げることは、2個の物体の散乱行列の極の分布関わる結果である。それは、物体の境界が解析的であるとの条件下において、散乱行列の極の分布の複素平面全体である種の一様評価を得たことである。これまでの散乱極の分布に関しては、C.Gerardの結果が最良であった。彼の結果は、任意のα>0にたいし、T_Z<αの範囲における散乱極の分布の情報は、|_Z|>C_αの範囲において有効であるというものであった。ここで、この定数C_αの評価は全く分からなかった。 今回の研究において、この定数の評価について、C_α【<!_】C_εα^<(3+ε)>(ε>0)を示し得た。 この証明の鍵となった事実は、周期軌道に収束する軌道の挙動を極めて正確に記述し得た事による。この挙動の正確な記述は、物体の個数が3以上の場合の考察においても、強力な働きをする。この働きのために、物体の個数が3個以上の場合の、ゼータ関数の記述を具体的に行うことを可能とし、ひいてはゼータ関数が複素平面全体に、有理型関数として解析接続できることを示す手がかりを与えるものである。 このように、本研究において、これまで具体的な形が全く想像も出来なかったゼータ関数の具体的表現を可能にすることが出来たのは特筆すべき結果と言える。
|