本年は研究計画の初年度なので、はじめに種々の人工ダイヤモンド薄膜試料を購入し、荷電粒子検出器の作製をおこなった。入手した試料は、(1)気相成長ダイヤモンド(6.0mm×6.0mm ×0.6mm)、(2)不純物含有率約100ppmの高温高圧合成ダイヤモンド(3.5mm×3.5mm×0.6mm)、(3)不純物含有率約1ppmの高純度高温高圧合成ダイヤモンド(2.5mm×2.5mm×0.6mm)、の3種である。(1)の気相成長ダイヤモンドは多結晶体で、試料を顕微鏡で観察したところ、結晶の大きさは基板側で1ミクロン以下、成長側で約10ミクロンであった。(2)と(3)の試料は単結晶で、それぞれのサイズは合成可能な最大のものである。これら各薄膜試料の表裏両面に電極板を蒸着し、小型の荷電粒子検出器を試作した。両面の電極板間に高電圧をかけ、薄膜中を荷電粒子が通過した時に生成される電子とホールを電極板に集め、その信号を増幅することによって荷電粒子を検出することができる。こうして作製された荷電粒子検出器の電極板間の静電容量や絶縁抵抗等のパラメーターを測定した後、実際にベーター線を照射し、荷電粒子検出器として動作することを確認した。荷電粒子通過時にダイヤモンド結晶中で生成される電子やホールの一部は結晶中に含有される不純物などによって吸収されるため、得られる信号がそのぶん小さくなり、SN比の低下をまねく。まだ予備的な結果であるが、信号の発生に利用される電子およびホールの割合は上記試料(1)、(2)、(3)についてそれぞれ約15%、30%、20%となった。本来試料(3)は純度が高いので、この割合が最も大きくなるはずであるが、予想に反する結果となっている。目下詳しい原因を分析中である。この問題も併せて、各試料の荷電粒子検出器としての性能評価を詳しく行っているところである。
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