3種の人工ダイヤモンド薄膜((1)気相成長ダイヤ、(2)不純物窒素含有率115ppmの高温高圧合成ダイヤ、(3)不純物窒素含有率1ppmの高温高圧合成ダイヤ)を用いて昨年度試作した荷電粒子検出器の性能評価を行った。各試料にβ線を照射し、このとき生成された電離電子のうち、信号の発生に寄与する電子の割合r_eを測定したところ、試料(1)および(2)では、薄膜にかけたバイアス電圧によってできる電場の値に比例してr_eが大きくなり、電場が5V/μmのとき、r_eはそれぞれの試料で7.5%、4.9%となった。これ以上電場を強くすると、試料(2)では暗電流によるショットノイズが増え、かえってS/N比が悪くなるが、試料(1)では、今回使用した高圧電源で発生できる最大値となる7.5V/μmまで電場を強くしてもノイズはほとんど増えず、しかもr_eは9.5%まで増加した。一方、試料(3)では、電場が0.2V/μmのときすでにr_eが28%となり、低い電場でも大きな信号が得られるものの、ノイズが信号を上回るほど大きくなり、荷電粒子の検出には適さなかった。この試料(3)の電気抵抗率および比誘電率を測定すると、それぞれ3×10^8Ω・cmおよび14.3となり、通常のダイヤモンドよりもかなり導電性の高いものであることが分かった。この試料は、不純物として含有する窒素の量は少ないが、グラファイトなどの導電性不純物の含有量が多いことが分かった。他の試料では、電気抵抗率10^<15>〜10^<16>Ω・cm、比誘電率6.5となり、ダイヤモンドが通常示す値にほぼ一致した。以上の測定から最も荷電粒子検出に適していると考えられる試料(1)を用いて、ADCによる出力信号の波高分析を行ったところ、電場が7.5V/μmのとき、S/N比が9.7、荷電粒子検出効率が97.3%となり、実用上ほぼ問題ない性能が得られた。
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