本研究を遂行するために、本年度は以下の事柄を実行した。 1.走査トンネル顕微鏡のノウハウの調査 本実験装置の開発にあたっては走査トンネル顕微鏡の技術が大いに役立つ。このため、走査トンネル顕微鏡を自作している研究者からの情報収集に努めた。その結果、トンネル電流検出部の配線や除振の方法など、ナノメートルスケールの制御に欠かせないの有用な技術を獲得できた。 2.探針周辺の形状の工夫 探針を制御するためのピエゾ素子は本研究においては回折電子の観察の邪魔になる。そのため、ピエゾ素子が極力邪魔にならない配置を考案し、設計を行った。 3.電子の軌道計算 従来は円筒対称な電極を持つ場合の電子の軌道計算しかできなかったが、3次元の電子の軌道計算を行うことのできるソフトを新たに購入し、効率よく回折電子を測定するための設計に反映させることができた。 4.探針の作成 電解研磨による探針作成装置を製作し、鋭い探針先端を得ることができるようになった。実際に走査トンネル顕微鏡で使用して、原子分解能が得られる鋭い針であることを確認した。 5.インチワームの使用 通常の走査トンネル顕微鏡に比べて、試料表面垂直方向の移動量が大きくなるため、インチワームを使用することにした。また、試料のクリーニング時に探針を汚さないようにインチワームで移動できる設計にした。 以上のようにして原理実験のための装置を設計し、現在製作・組立中である。平成11年度には目的の実験が可能になると考えている。
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