研究概要 |
III_2VI_3化合物半導体はカチオン位置の1/3が構造空孔となっている.Ga2Te3の融点直下の785℃で時効した試料では{111}面ほぼ10枚ごとに面状欠陥が3次元的に周期的に配列した長周期構造が出現した.像コントラスト計算及び幾何学的考察よりこれはカチオン副格子上の1/3を占める構造空孔が集合した面状欠陥であり,構造空孔はすべて4つの{111}面上のみに存在した.すなわちSe副格子は完全なFCCであるが最表面が{111}空孔面となる正四面体もしくは正八面体に囲まれた領域からなり,空孔面に囲まれた内部はTeのGa配位数4の閃亜鉛鉱型構造となっていた.この構造では空孔濃度は単位胞レベルで不均一,原子数1万個程度のメソスコピックな領域で均質となるメソスコピック相,しかもその要因となる面状欠陥が規則的なメソスコピック規則相として認識された. この相の相安定性を知るために試料保持温度を下げる,あるいは同族ながらより共有結合性の高いGa2Se3との混晶を作成し,超格子反射の間隔およびその強度変化について観測した.その結果,試料保持温度とGa2Sc3濃度の増加は同じ効果,すなわち面状欠陥の周期を短くし,しかもそのサテライト強度を弱くした.メソスコピック相は平均配位数が2.67にもかかわらず4配位のVI族原子をできる限り効率的に生成するといったガイドラインで説明できるが,周期的になった要因はこれと,共有結合性の微妙なバランスの下に起きたと説明された.
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