本研究課題はパルス強磁場下でのメスバウアー分光測定法を開発するものであるが、メスバウアー分光測定を行うためには2つの技術的な障壁がある。その第一はパルス磁場は超伝導磁石で発生させる静磁場とは異なり、比較的短い時間で磁場の大きさが変化し、短時間間隔毎の磁場の大きさに同期させてメスバウアー分光測定を行う必要がある。第二にガンマ線のエネルギー変調にドプラー効果を用い、極めて超高感度の磁場検出を行っているため、パルス強磁場からの0.1%以下の漏れ磁場でもって影響を受けてしまう。本研究課題はこれらの問題点をクリヤーするための契機となることを目的として以下の順序で遂行した。 (1) 最大磁場3Tパルス幅約40msのパルス磁場発生コイルを作製し、液体窒素中にコイルを保持し既存の電源を用いて発生波形を確認した。 (2) このコイルを保持する、ガンマ線透過用マイラー窓を有する液体窒素クライオスタットを設計・製作を行い、テスト稼働の直前である。 (3) 比較的短いパルス幅中を一定速度で駆動させることができる特別製メスバウアー分光用トランスヂューサー(電磁駆動速度発生器)を設計・注文した。さらにパルス波形中での透過ガンマ線計数の振り分けよう電子回路およびメモリーを設計・注文した。 これらの開発した治具を用いて、実際のメスバウアー分光測定を現在開始せんとしていて継続した課題遂行が不可欠である。
|