研究概要 |
結晶学的乱れのない重い電子系化合物Ce_7Ni_3の圧力下での非フェルミ液体的挙動の原因を明らかにするため、単結晶試料に固相電解法を施して純良化し、常圧下での磁気抵抗、ホール係数、高圧下での50mKまでの比熱、交流磁化率の測定を行った。それらの研究で得られた成果は以下の通りである。 1. T_N以下の電気抵抗は固相電解を施しても温度の低下とともに減少せず、0.35Kでも130〜140μΩcmの値を示した。10K以下のホール係数の温度変化はスキュー散乱に起因する異常ホール効果が支配的であった。また、磁化容易軸であるc軸方向に磁場を印加した場合、負の大きな縦磁気抵抗を示した。これらはCe_7Ni_3の低温物性にスピンの揺らぎが重要な役割を果たしていることを示唆している。 2. T_Nは圧力増加とともに直線的に減少し、Pc=0.39GPaで消失する。Pc付近の0.36GPaの圧力下での比熱の温度比C/Tは0.7K以上では-logTに比例するが、0.5K以下では-logTの振る舞いから下方にずれた。これはちょうどPcでも基底状態がフェルミ液体的であるというスピン揺らぎのSCR理論による予想と矛盾しない。 3. Pc以上の0.43GPaではそのC/Tは0.2K以下で温度に依存しない一定値を取り、フェルミ液体的挙動が回復している。しかし、交流磁化率は低温でも増加し続けており、このことは単純なフェルミ液体論では理解できない。 今後はCe_7Ni_3の0.05Kまでの電気抵抗、交流磁化率の測定を行う。また、同じ結晶構造を持つCe_7M_3(M=Pt,Pd)単結晶を育成し、その圧力下での電気抵抗、帯磁率、比熱を測定し、Ce_7Ni_3と比較検討する。
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