超強磁場、超高圧、超低温の多重極限環境の創製には大がかりな装置と、多額の費用を要するが、多重極限の妙味はむしろその組み合わせにある。そこで、本研究においては大がかりな装置、多額な費用を必要としない範囲、即ち、強磁場(40T)、高圧(10GPa)、極低温(0.5K)のミニ多重極限の創製を目指す。この際の基本的なアイデアは、小型の高圧クランプセル内にミノパルスコイルを導入した小型高圧クランプセルマグネット(1GPa、10T)の開発であり、本年度はこれの設計、制作を試みた。試料空間を直径2φ、長さ2mmの円筒形に設定し、外径4φ、内径3φ、長さ6mmの空間に0.12φの銅線200回巻のコイルを巻き、これに最大280Aのパルス電流を印加する。この際、3mFの電解コンデンサを用いれば、200V充電で、パルス幅1.5ms、最大磁場10Tが得られる。これを既設の30Tマグネットと同期して発生させることで40Tの磁場が得られる。そこで、コンデンサ等、電子部品を購入し、パルス磁場発生回路を制作した。また、ミニコイルを入れる高圧セルとして、高強度セラミックス材料のジルコニアを用いた内径4φ、外径8φ、長さ25mmのシリンダー及び外径4φ、長さ20mmのピストンを外注し、これを高圧クランプするためのセルをベリリウム銅を用いて制作を開始した。さらに、3Heガスを購入し、クライオスタットの制作を行った。この際、真空ポンプを一台購入し、既設のガスハンドリングシステムに組み込んだ。以上の通り、現在、研究開発途上であり、来年度完成を目指す。
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