研究概要 |
本研究は,九州大学中層大気大循環モデルによりシュミレートされた下部熱圏ダイナモ領域の中性風を使用して,その領域に引き起こされるダイナモ電流を計算し,Sqの変動と中性風変動との関係を調べることを目的としている.また,磁場変動の観測データとの比較を行い,Sqの動態の解明をめざす.昨年度までの研究により,春秋の季節には比較的赤道対称な電流系が得られ,夏冬の季節には夏側の半球で卓越し,冬側の半球では無視できるほど小さな電流系が引き起こされることが,モデルおよび観測により確かめられている.モデルにおける非対称性は,主にダイナモ領域での中性風が夏側で強いことに起因している.今年度は,このモデル中に卓越する南北非対称性の原因をより詳しく調べるために,大循環モデルの中性風のデータを詳しく解析し,潮汐振動の季節変動を調べた.その結果,1日潮だけではなく,半日潮にも季節変動が見いだされた.特に夏の極付近で西進する東西波数1の半日潮が見いだされた.これは,南極での観測でも見いだされている波動であり,この波動の変動がSqに与える効果を今後モデルで見積もる必要がある. また,中性風だけではなく電気伝導度の非対称性を取り入れることが可能なモデルの開発に着手した.しかし,このモデルも2次元性を仮定しており,赤道付近に集中した3次元電流は記述できない.これを可能にするためには3次元モデルの開発が必要であり,そのための予備的調査として地磁気線に沿った座標を使用した3次元モデルの可能性について検討した.
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