付加帯の岩石が強く安定な二次磁化を持っているという調査結果が日本やアメリカ西海岸から報告されている。これまでの研究によれば、赤色チャートの二次磁化は付加プロセスのある時期に獲得されたと考えられている。従って二次磁化の方位や磁性鉱物を特定すれば付加プロセスに関する情報が引き出せる可能性があると考えて二次磁化に焦点を当てた測定を始めた。 本研究の調査地域は岐阜県各務原市木曽川沿いの勝山である。Shibuya and Sasajima(1986)や昨年度の研究で、この地域の赤色チャートの磁化の持つ4つの成分(低温からA〜D)の方位がすべて明らかになり、それらの方位から磁化獲得の時期をある程度特定できるまでになっていた。本年度はそれらの磁化を担っている磁性鉱物を濃縮しできれば抽出することを目的として、赤色チャートの粉砕し、磁気分離、顕微鏡下での磁性鉱物粒子の拾い出し、を行い、それらで分離された部分と、残った部分双方に付いて磁気履歴曲線による分析を行った。IRMの熱消磁実験で赤色チャートには磁鉄鉱と赤鉄鉱が共存している事が明らかになっていたが、分離前のバルクの磁気履歴曲線分析でも、それらは確認された。しかし、磁石を使い取り出した磁性鉱物の磁気履歴分析では抗磁力Hcは数mTで典型的な多磁区粒子の磁鉄鉱の値となり、残留磁化の分析から明らかに存在している単磁区の磁鉄鉱粒子の存在を確認できなかった。今後は、付加プロセスに関連した磁化を担っていると思われる単磁区の磁鉄鉱粒子の濃縮のための抽出法を検討する必要がある。
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