研究概要 |
付加帯の岩石の二次磁化を担っている鉱物の生成過程について考察するために本年度は地球化学的研究を重点的に取り組み、主要元素の定量分析、希土類元素(REE)の定量分析、Rb-Sr及びSm-Nd同位体比の測定を行なった。 試料は本研究で重点的に取り組んでいる岐阜県各務原市/愛知県犬山市の木曽川沿い美濃帯チャート層(三畳紀)の他に、九州に分布する三宝山帯チャート(二畳紀・三畳紀)の分析も行なった。美濃帯のチャートも三宝山帯のチャートもRb-Srアイソクロンが引けて、それぞれ、210Ma、240Maの年代を示した。これは、チャート中の放散虫およびコノドント化石の示す年代と極めて近いものである。従って、チャート堆積時の構成要素中のRbやSrは、堆積および直後の続成作用で均質化し、その後は閉鎖系になったことを示している。一方Nd-Sm系ではアイソクロンを引くことができなかった。これは、おそらく、希土類元素の移動度がRb,Srに比べて小さく堆積後の均質化が進まなかったためであろう。Sr初生比、Al203/(Al203+Fe203)比、REEパターンのCe異常はすべてチャートの起原物質としての陸源物質の重要性を示しており、相互に矛盾は見られない。従って、これらのチャートは堆積時の化学的/同位体的特徴を維持していると考えられる。これらの事実は二次磁化を担う二次的な磁性鉱物の生成は、外部からのFeの流入に伴ったものではなく、チャートの内での鉱物の変化のみによったことを強く示唆している。
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