安定常磁性種の電子スピン緩和時間測定を本研究所既設のパルス電子スピン共鳴装置を用いて行った。縦緩和時間は飽和回復法により決定し、横緩和時間は2パルスエコー法をにより行った。広い温度領域でこれら2つの緩和時間を決定し、回転相関時間決定した。 (1) 対象とした化合物は、水酸基を有するNitroxideラジカルと持たないものをとりあげ、溶媒和に対する水素結合の寄与について考察した。このために、アルコール系溶媒・n-アルカン溶媒について検討した。水酸基を持たないNitroxideラジカルでは、緩和時間に溶媒効果がほとんど現れないことが明らかにされた。一方、水酸基を有するNitroxideラジカルでは、分子サイズがほとんど同じであるにもかかわらず緩和時間が2倍程度長くなった。さらに、アルコール中では炭化水素中に比して20%程度遅くなった。これらの結果は、ラジカルに対する溶媒和に水素結合が重要な役割を果たしているものとして解釈された。 (2) 広いπ系を持ち不均一に広幅化した信号を示すGalvinoxylおよびDPPHラジカルについて電子スピン緩和時間を決定し、π共役系の溶媒和に対する効果について検討した。このために、芳香族炭化水素溶媒・n-アルカン溶媒の結果について比較検討した。 この結果を基に、平成11年度は、本研究の目的である過渡的に生成するラジカル種の電子スピン緩和時間測定を進める。
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