ピエゾ素子により数10ナノメートルの精度で駆動できる誘電体多層膜反射鏡と固定された同様の反射鏡を用いて、長さ1cmのマイクロメートル程度の狭い間隙をつくった。空気中でこの間隙に、現有するフェムト秒レーザーで生成したパルス白色光を導入し、2マイクロメートル程度の間隙まで白色光が通過し、400nm〜700nmの領域で過渡吸収測定が可能であることを確認した。この間隙に有機溶媒を充填したところ、表面のメニスカスによって光路が変わり白色光が通過しなくなった。これを回避するために反射鏡の全体を有機溶媒に浸すことの可能な光学セルを試作し、10マイクロメートルまでの間隙でも白色光が通過できる過渡吸収測定装置の開発に成功した。これを用いてシクロヘキサンを溶媒とし、ジブロムアントラセンなどを、258nmの励起光(パルス幅 150fs)を用いて励起したところ、励起一重項状態、励起三重項状態の中間体吸収スペクトルの測定が可能となった。
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