研究概要 |
本研究では、多面体対称を持つ有機ポリシランおよび有機ポリゲルマンを創製し、これらの構造パラメータ、ユニークな反応性や電子的・光学的性質を記録することを最終目的として,以下の知見を得た.(1)オクタシラキュバンとして,ジメチルテキシルシリル基を置換基とする誘導体を合成した.このものは,本報告者が世界で最初に合成したオクタシラキュバン誘導体(tert-ブチルジメチルシリル置換体)にくらべて,酸素やアルコールに対する安定性が著しく高く,空気中で安定に取り扱えることがわかった.このものは,光に対して高い反応性を有し,光分解では,690nm付近に強い吸収を有する新たな化学種が生成した.しかし,この化学種の寿命は室温で12msであり,単離することはできなかった.しかし,この波長領域に吸収を有するものとして,新規のケイ素-ケイ素共役型二重結合化学種が期待される.現在,捕獲試薬を用いた捕獲実験で,この化学種の構造を定めることを試みている.(2)デカシラアダマンタンの合成にあたって,1,3,5-トリクロロシクロヘキサシランとトリス(クロロジオルガノシリル)オルガノシランとの共縮合を含む数種の合成法を検討し,極めて低い収率ながら,メチル置換基を有するデカシラアダマンタンを合成すことができた.このもののX線結晶構造解析を低温(-150℃)で行い,デカシラアダマンタン骨格の形成を確認した.しかし,この分子の対称性が著しく高く,C60(炭素60))のような多面体炭素分子の如く,分子自体が結晶中においても回転運動を行っていることが判明した.したがって,構造解析は完了していない.今後,炭素鎖の長い置換基を導入して,分子の回転運動を止め,良い構造解析データを得る予定である.(3)イコサシラドデカヘドランを合成については,リチウムによるトリクロロエチルシランの縮合とそれに続く塩化アルミニウムを触媒とする不均化反応を検討しているが,最終生成物を得るまでには至っていない.
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