ラジカルやカルベン等の活性種と共役金属キレート配位子上の反応例は報告例が少なく未開拓の分野といえる。本研究では、メタラジチオレン環またはアセチルアセトナト環上の活性種との置換および付加反応、さらにその脱離反応を検討した。 1)メタラジチオレン環上の活性種の捕捉 a)コバルタジチオレン環はジスルフィド化合物の熱あるいは光反応により発生したチイルラジカルを捕捉することを見出した。光増感反応を利用すると、更に効率良くラジカル置換反応が進行する。一方、ラジカル開始剤のMe_2(NC)CN=NC(CN)Me_2(AIBN)共存下においては、硫黄ラジカルの代わりに、AIBN由来の炭素ラジカルの捕捉がジチオレン環上で起こった。 b)ニッケラタジチオレン環は硫黄ラジカルとは殆ど反応せず、炭素ラジカルとの置換反応が選択的に見られた。 2)アセチルアセトナト環上の活性種の捕捉 コバルタジチオレン環と類似のラジカル種による置換反応はトリスアセチルアセトナトクロム環上においても確認された。 金属の違いによりラジカル活性種との反応性が著しく異なることは大変興味深い。 3)コバルタジチオレン錯体イミド架橋付加体の脱離反応機構 コバルタジチオレン錯体イミド架橋付加体はルイス酸によりイミド架橋部分がシクロペンタジエニル配位子へ移動する興味深い転位反応は、ナイトレンを経由することが推測された。
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