研究概要 |
スピンクロスオーバー挙動のような有機分子では実現しにくい特性を液晶に賦与し、LCD材料を超える磁気・光機能性を引き出すことを目標として、あえて6配位八面体型の配位構造を含む金属錯体を取り上げて液晶材料を導く試みを行っている。 1.非対称二座配位子を用いるfac-トリスキレート錯体の液晶挙動調査 前年度から合成しているコバルト錯体 fac-[Co(OS)_3](OS=N-(4-alkoxybenzoyl)-N',N'-di-n-butylthiourea アニオン)のいくつかの同族体の熱的性質を調べた。比較的融点の低い望ましい化合物が得られたものの、安定な液晶相の検出には至らなかった。 2.「室温」スピンクロスオーバー錯体のアルキル長鎖修飾 「室温」スピンクロスオーバー錯体として知られる、1,2,4-トリアゾール誘導体(NN)の鉄錯体[Fe(NN)_3]X_2・2H_2O(X=アルキルスルホン酸イオン)から中間相挙動を引き出すべく、NNの修飾を開始した。NNの4-アミノ誘導体と4-アルコキシサリチルアルデヒドを縮合させ、一連のアルキル化配位子を得た。今後これらを用いて錯体を調整し、そのスピン状態を明らかにしていく予定である。 3.参照4配位平面型錯体の液晶性の考察 既に液晶性が確立されているN-サリチリデンアニリン誘導体(NO)のビス型銅錯体[Cu(NO)_2]のスメクティックA/C多形現象に関し、金属中心近傍を立体的にガードするような位置にメチル基を導入すると、スメクティックC相の発現が仰制されることがわかった。本研究課題との関連性において、この型の錯体は配位不飽和の参照化合物と見なすことができ、この結果は低対称液晶相が軸配位性相互作用によって安定化されているのではないかという観測を支持している。6配位錯体は分子間相互作用の点でむしろ単純化された系であり、その有用性に対する期待が高められた。
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