研究課題/領域番号 |
10874102
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
松下 未知雄 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80295477)
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研究分担者 |
河合 是 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00087298)
鈴木 剛彦 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50087300)
彌田 智一 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90168534)
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キーワード | 弱強磁性 / 有機ラジカル / 分子不斉 / ビオローゲン |
研究概要 |
本研究の目的は、強い反強磁性的相互作用を持つ有機ラジカルの結晶に分子不斉を導入することにより、高い転移温度を持つ有機弱強磁性体を構築することにある。分子設計の方針としては、有機ドナー分子やアクセプター分子母体とし、その酸化・還元によって生じるイオンラジカルを用いることとした。このアプローチには、不安定な不対電子をあらわに扱うことなく、最後に電解法により結晶化と同時に発生させられるという合成上のメリットと、これまでの有機導電性物質の研究により開拓された合成手法を利用できるため誘導化が容易であるという2つの利点がある。そのなかでも特に、ピオローゲンは、4,4′-ビピリジンがらハロゲンがアルキルを用いた4級化反応により容易に調製することが出来る。そこで、不斉置換基として2-メチルブチル基を導入した2-メチルブチルビオローゲン、及び、N-メチル-N′-(2-メチルブチル)-ビオローゲンを合成した。これらの分子はメチルビオローゲンとほとんど同じ酸化還元電位を持ち、良好なアクセプター分子であることがわかった。しがしながら、これらの分子のラジカルイオン塩を調製する目的で、アセトニトリル中、テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩を電解質として電解結晶化を試みたものの、結晶は得られなかった。この結果は、比較的長いアルキル鎖の導入による溶解度の向上と、不斉の導入により分子の対称性が低下したために結晶化しづらくなった両方の原因によるものと考えられる。現在、より確実に電解結晶化可能な分子として、TTFに2-メチルブチルチオ基を導入した3種類の分子の調製を行っている。これらの分子は、一電子酸化により目的とする不斉ラジカル分子結晶を与えるとともに、部分酸化されて混合原子価状態が生成された場合、不斉な環境を有する導電性物質を与えると考えられ、磁性にとどまらず、興味深い新規物性の発現が期待される。
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