研究概要 |
界面活性剤の棒状ミセルを鋳型として合成されたシリカ系物質(MCM-41)がハニカム状でナノメートルサイズの均一な孔径を持つことから,その開発以来,触媒化学の分野を主体として活発な研究が始められている。一方,分析化学的立場からはモルキュラーシーブやカラム分離剤,吸着剤などの直接的応用も期待されるが,細孔が一次元性の構造を持つことに着目した新規物質の合成も重要である。分析化学における新たな標準試料の調製手段としての利用,およびナノメートル領域を評価する顕微分析法へ適用をめざして,ナノメートルサイズにおける物質の構造制御を行うことを研究目的とした。 MCM-41の細孔内部のシラノール基にイオン交換を利用してCuまたはZnを導入し,これを鋳型としてジシアノベンゼンの気相蒸着を行い,ナノ細孔内での金属フタロシアニンのShip-in-a-Bottle合成に成功した。反応量変化に伴う拡散反射スペクトル変化を検討した結果,生成量増大に伴うQバンドの励起子分裂の解析から会合状態の変化が分かり,高充填では一次元会合体の生成が示唆された。また,細孔内へ蛍光性分子(ペリレン)を気相導入し,高分子マトリックス中にスピンコートにより分散させ,その単一粒子について共焦点蛍光顕微計測を行った。蛍光スペクトルには高充填の場合,エキシマーに由来する発光帯が観測され,ペリレン分子の会合が確認された。また,各粒子から発生する蛍光強度に励起偏光依存性,すなわち異方性が観測されたことから,細孔内でペリレン分子集合体が配向していることが分かった。 以上の研究により,一次元ナノ細孔内における分子合成ならびに配向制御の有効性を明確化した。
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