界面活性剤ミセルへの種々のアミノ酸やヌクレオチドの分配特性を解明することを目指して、非イオン性界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いて、様々なタイプのアミノ酸、アミノ酸蛍光誘導体およびヌクレオチドのプロトン付加反応を電位差滴定法、精密滴定力ロリメトリー、分光光度滴定法、密度滴定法、蛍光光度法で調べる。アミノ酸やヌクレオチドのミセル内分配位置を明らかにするために、本研究では蛍光スペクトルを用いることを試みた。蛍光特性が水溶液中とミセル中では違いがあることを考えると、ミセル内部が一様でなく、局部構造があれば構造に依存して蛍光特性がちがってくるであろうと考えられた。まず、ヌクレオチドを使うまえに、そのモデル物質であるフェナントロリン(phen)を用いて、蛍光法が使えるかどうか検討した。蛍光スペクトルを定量的に解析できる蛍光スペクトル測定システムを構築し、フェナントロリンの蛍光スペクトルのpH依存性からphenとHphen^+の固有の蛍光スペクトルを得た。界面活性剤Triton溶液中にはphenのみが可溶化され、蛍光スペクトルの界面活性剤濃度依存性から、ミセル中に存在するphenの分配定数と固有スペクトルを決定した。分配定数は別途、ポテンショメトリーで決定した値と同じ値を得、この測定法が使えることがわかった。また、同時に得られたミセル中の固有スペクトルのモル蛍光強度は水溶液中に比べて非常に弱く、ミセル中では強く消光されることがわかった。したがって、フェナントロリンの蛍光スペクトルからミセル構造の非均一性を確認するにはいたらなかった。核酸AMPの場合、酸性溶液中ではミセルとの相互作用は発生せず、pH>9でミセルに取り込まれることが、ポテンショメトリーと蛍光スペクトルから明かになった。AMPの蛍光はフェナントロリンと同様、ミセル中で消光されることがわかった。
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