初年度は下記2項目についての研究を計画し予定通りの研究が行われた。 1. アンドロピン遺伝子の起源についての解析 Andropinの出現時期を知るために、D.melanogaster近縁種についてゲノムサザン解析を行った。近縁種のD.virilisではAndropinの存在は確認されていないことから、よりD.melanogasterに近縁である10種を対象としたところ、AndropinのシグナルがD.melanogaster亜種群およびD.takahashiiで得られ、分子時計の仮定に基づきAndropinの誕生時期を約1500万年前と推定した。 2. 多種類のショウジョウバエ系統からのアンドロピン遺伝子のクローニングと遺伝学的解析 Andropinの進化的特徴を明らかにするために、D.melanogasterおよびその近縁7種の単一雌系統20系統について、PCR法に基づきAndropinのDNA塩基配列を決定した。D.melanogaster種内においては、種内変異の量はAndropinではCecropinに比べ低い一方、Andropinの種間の比較では、非常に多くの非同義置換が観察された。これらの非同義置換にはアミノ酸の性質を変えるものも多く含まれ、近縁種間においてアンドロピンペプチドの二次構造が変化している可能性も示された。また中立性検定より、このAndropinの進化には正の自然選択の作用が強く示唆された。 以上の結果から、Andropinの祖先遺伝子は、セクロピン多重遺伝子族形成過程において比較的最近になって出現し、その後Cecropinとは異なり、短期間のうち急速な分化を経て進化したと考えられる。
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