森林樹木の葉寿命に関してはKikuzawa(1991)の基本モデルによってほぼ記述できることが明らかである。すなわち、葉寿命は葉を製造するコスト、葉の光合成能力とその時間的低下の3つのパラメーターによって決定される。またこれに季節性の概念を導入することによって、常緑落葉性を説明できることを明らかにした。またパラメーターの値を変えることによってシミュレーションを行いそれらの地理的分布も説明した(Kikuzawa 1996)。まず、基本モデルについては11種の植物について、パラメータを求めこれらから計算した理論的葉寿命と実測葉寿命を比較し、きわめてよい適合を得た。またコストについては単に葉製造コストだけでなく、支持部のコストをも導入したところ、樹木のみならず、草本、水生草本等をも含めた幅広い植物群の葉寿命を比較可能であることが明らかになった。またこのことは成木と幼木の葉寿命の比較からも支持された。これらは現在論文として印刷中である。またシベリアヤクーツクの調査では落葉樹であってもカラマツは春早くに開葉し、雪解けから気温が最高に達するまでの時間を利用すること、シラカンバは気温が高くなった時期に開葉し温度条件が最高の時期に最大光合成を達成していることが明らかになった。このことは、各種がもつパラメーターの値はランダムに決まっているのではなく、それぞれの種のストラテジーを反映したものと解される。この問題は今後共同研究として展開していく予定である。
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