研究概要 |
本研究に対し予算の交付を受けたのは10月末である。冬季に植物採集は不可能なので、本年度は既に採集された材料を使い、観察法と観察機器を整備することにした。Cyperus(カヤツリグサ属)などカヤツリグサ亜科の花序末端(小穂)の縦断ミクロトーム切片を多数作製、観察した。茎頂分裂組織(成長点)は常時活動していて、側芽として若い花原基を作り続けている。下方の花が結実すると、成長点およびその付近の若い花原基はそのままの形で枯死する。これはTrollの言う"Polytelie"の性質を典型的に現わしている。Cladium(ヒトモトススキ属)などイヌノハナヒゲ亜科の採集、観察は来年度以降とせざるを得ない。 1999円1月、F.Weberling(Ulm大学教授、Trollの高弟)によりTroll花序論の続編(Die Infloreszenzen,Bd.2, Teil 2, Jena)が出版され、筆者に送られてきた。Trollの没後20年かかって、その花序形態学の体系はようやく一応、完結されたことになる。筆者はこの体系をコメントする総説を欧文および和文で書くことを依頼され、只今その執筆のためTroll/Weberlingの全著作を検討中である。"Monotelin"と"Polytelie"という概念を区別したことはTrollの大発見として評価できる。しかし、"Polytelie"の中に末端が仮軸分枝するもの(Thyrsus,いわゆる密錘花序)を含めているため、その説明や図が大変複雑で難解となっている。筆者は、Thyrsusuの類を別にして第3のカテゴリーとすればもっと明快な体系を作れる、と提案するつもりであるが、なお検討を要する。
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