研究概要 |
房総半島などで現地調査を行い、研究材料植物を採集した。Cyperus(カヤツリグサ属)、Mariscus(イヌクグ属)などカヤツリグサ理科の花序末端(小穂)の縦断ミクロトーム切片を多数作製、観察した。茎頂分裂組織(成長点)は常時活動していて、側芽として若い花原基を作り続けている。下方の花が結実すると、成長点およびその付近の若い花原基はそのままの形で枯死する。これは Troll の言う"Polytelie"の性質を典型的に現わしている。Cladium(ヒトモトススキ属),などイヌノハナヒゲ亜科の採集にも苦心したが、なお材料が不足していて、明確な結果は出せていない。来年度、再びこの植物群の採集から出発する予定である。 1999年、F.Weberling(Ulm 大学教授、Trollの高弟)により Troll花序論の続編(Die Infloreszenzen,Bd.2,Teil 2,Jena)が出版され、筆者に贈られてきた。Trollの没後20年かかって、その花序形態学の体系はようやく一応、完結されたことになる。筆者はこの体系をコメントする総説を書くことを依頼され、只今その執筆のため Troll/Weberling の全著作を検討中である。"Monotelie"と1"Polytelie"という概念を区別したことは Trollの大発見として評価できる。しかし、"Polytelie"の中に末端が仮軸分枝するもの(Thyrsus,いわゆる密鏡花序)を含めているため、その説明や図が大変複雑で難解となっている。筆者は,Thyrsusの類を別にして第3のカテゴリーとすればもっと明快な体系を作れる、と提案するつもりであるが、なお多くの文献や実物で検討を要する。
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