昆虫における温度・湿度環境選択行動についての行動学的解析システムの開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10874130
• 研究機関: 福岡大学
• 研究代表者: 横張 文男 福岡大学, 理学部, 教授 (20117287)
• 研究分担者: 西川 道子 福岡大学, 理学部, 助手 (30078563)
• キーワード: 昆虫 / ウモンゴキブリ / 行動解析 / 湿度環境 / 湿度定位行動 / コンピュータ / 行動軌跡 / 触角

研究概要

昆虫の湿度・温度選択行動の行動生理学的解析の基礎になる行動学的データを得るために、行動記録・解析用のコンピュータ・プログラムを開発し、それを用いて若干の行動解析データを得た。
コンピュータ・プログラムは、Micrsoft DOS/V基準のコンピュータを用いて、BASIC言語で作成した。新たに開発するプログラムは次の特徴を持つ。(1)ビデオ装置で記録した行動のビデオ画像から画像の1フレームごとに行動軌跡を昆虫の頭部・尾部・左右の触角の先端と基部など8点をコンピュータ画面のX・Y座標として記録できるようした。出力データはエクセルなど市販の表計算・グラフ作成用のソフトウェアに容易に入力できる様式(コンマ区切りのテキストファイルなど)にした。(2)ビデオ装置をコンピュータで制御して再生時には自動的に設定したフレーム数をスキップできるようにした。(3)行動軌跡を記録するために、ビデオ画面とコンピュータ画面をスーパー・インポーズできるようにした。
このコンピュータ・プログラムを用いて、実際に行動解析を試みた。湿度および温度選択行動を観察・記録するための円形の実験アリーナを作り、中心線で分けた2つの半円部分で温度または湿度環境が異なるようにした。この中でゴキブリを自由行動させ、その行動を暗視カメラで撮影しビデオテープに記録し、そのデータを試作したプログラムで行動軌跡をX-Y座標として記録し、解析した。その結果、摂水を制限されたゴキブリは湿環境に長く留まることがわかり、さらに湿環境に長く留まる原因は、湿環境での行動は乾環境での行動と比較して、1)歩行速度が低下し、2)歩行の曲がり(deg/cm)が増加することにあることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Makoto Mizunami: "Modular structures in the mushroom body of the cockroach." Neuroscience Letters. 229. 153-156 (1997)
• [文献書誌] Yoshiyuki Yamazaki: "Three classes of GABA-like immunoreactive neurons in the mushroom body of the cockroach." Brain Research.788. 80-86 (1998)
• [文献書誌] Michiko Nishikawa: "Function-specific distribution of axon terminals of input neurons in the calyces of the mushroom body of the cockroach,Periplaneta americana." Neuroscience Letters. 245. 33-36 (1998)
• [文献書誌] Makoto Mizunami: "Topograph of modular subunits in the mushroom bodies of the cockroach." Journal of Comparative Neurology. 399. 153-161 (1998)
• [文献書誌] Makoto Mizunami: "Topograhy of four classes of Kenyon cells in the mushroom bodies of the cockroach." Journal of Comparative Neurology. 399. 162-175 (1998)
• [文献書誌] Fumio Yokohari: "Atlas of arthropod sensory receptors(分担:Hygro-and thermoreceptors)" Springer Verlag, 220 (1999)
• [文献書誌] 横張文男: "行動生物学" 朝倉書店, 147 (1997)