研究概要 |
本研究は、日韓の民族服である和服と韓服(チョマチョゴリ)を両国の被験者それぞれに着衣させ、寒冷曝露中の生理的、心理的諸反応を比較することによって衣文化にともなう耐寒反応の違いを検討することを目的とした。 被験者は、日本と韓国の健康な女子大学生各々6名で、身長、体重、体表面積、皮下脂肪厚にみられる身体的特徴はほぼ同じであった。使用した和服は着物、帯、草履など14点、韓服はチョマ、チョゴリ、靴など7点で構成され、それぞれの全重量は3200g,1295gであった。また生地はいずれも絹であった。被験者は同国の2名ずつが1組となって和服か韓服のいずれかを着用し、前室20℃(RH50%)で30分安静後、5℃(RH50%)の寒冷環境へ立位に近い椅座位で90分間曝露された。測定項目は、直腸温、皮膚温(7点)、酸素摂取量、心拍数、及び温冷感、快適感の主観評価であった 直腸温及び平均皮膚温の各低下度は、和服と韓服のいずれにおいても韓国人の方が有意に大きく、その程度は和服より韓服において大きい傾向であった。しかしながら体重当たり酸素摂取量は、和服では韓国人が、韓服では日本人がそれぞれ有意に高い値を示し、いずれも被験者にとって異国の民族服が高い代謝反応を示す結果となった。全身的な温冷感については、いずれの民族服も寒冷曝露中で日韓の差はなかったが、20℃の前室では和服では韓国人が、韓服では日本人がやや涼しいという主観を示した。
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