研究概要 |
本研究では,金属多層超薄膜を製作する装置を構築し,大きな二次の非線形感受率を持つ膜を作成して,その感受率を決めている起源を解析することを目的としている.今までに得られた成果を以下に列挙する. 金属超薄膜作成用真空装置の整備 3連の金属蒸着装置を購入し既存の真空装置に装着し稼動させた.これにより金属多層超薄膜の作成が可能になった.また蒸着速度のキャリブレーションを代表的な金属について行い,1nm以下の制度で蒸着速度の制御を可能にした. 短波長励起光によるSHG観測システムの構築 今までのSHG分光システムは迷光の影響で励起光で2eVまでしか測定できなかった.これを紫外域のフィルター,特殊仕様の光電子増倍管等を用いることで,上限エネルギーを励起光で3eVまで上げた.これによりSH光で6eVまでのエネルギー範囲で掃引が可能となり広いのエネルギー領域をカバーできるようになった. ガラス/Au界面のSHGの励起光子エネルギー依存性 ガラス上にAu膜(100nm)を蒸着し,その界面から発生するSHGの励起光子エネルギー依存性を空気中で観測した.その結果1.25eVと2.5eVに鋭いピークが観測された.これらのピークは同じ準位における1光子共鳴と2光子共鳴であり,界面の電子状態に共鳴している可能性が高い. NaCl(100)劈開面上のAu薄膜からSHG 超高真空中で,NaCl(100)劈開面上のAu蒸着膜のSHG観測を行った.その結果堆積膜厚で27Å以下の膜と60Åの膜では,異なったエネルギーで表面SH光の共鳴が観測された.これは膜の結晶成長面と表面形状が膜厚により異なっており,その表面電子状態の違いを反映していると考えられる.
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