研究課題/領域番号 |
10875025
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北川 浩 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30029095)
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研究分担者 |
尾方 成信 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (20273584)
中谷 彰宏 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50252606)
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キーワード | 脂質二重膜 / DPPC分子 / 分子動力学シュミレーション / オーダーパラメータ / ゲル相-液晶相変態 / 弾性異方性 / 平均場近似 |
研究概要 |
A. 生体由来の膜脂質の集合体に対し、生体内環境下での分子動力学法シミュレーション法を適用してつぎのような知見を得た。 1. 細胞脂質膜として標準的なジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を脂質分子を取り上げ、その基本特性を検討するために15×15分子2層を基本単位とする周期構造よりなる2重膜に対して、分子動力学シミュレーションにより水環境の中での緩和構造の温度依存性について検討を加えた。安定構造に対するオーダパラメータの温度依存性が実験的観測値とよく対応すること、そしてゲル相から液晶相への相転移が290Kから350Kの間で生じていることを確認した。 2. 面内力を加えた下での変形特性を評価し、弾性特性とその異方性を評価した。液晶相では面内等方性を示すがゲル相の状態では異方性が現れることから、前者は液体的構造を、後者は結晶構造を持つと推定された。 B. 解析の高速化を図る目的で、多数の脂質分子が特定分子に及ぼす影響を平均場で置き換え、その中に置かれたDPPC分子の挙動から膜体の特性を評価するシミュレーション法の開発を進め、つぎのような結果を得た。 1. オーダパラメータの値から推定して概ね妥当な結果が得られると判断されるが、1分子解析から得られる情報には限界があり、集合体の評価に結びつけることは難しい。 2. 分子振動のスペクトル解析から、直接結合>結合角度>二面角>非結合相互作用に関連した振動の順に、振動数の大きさに歴然とした差が現れる。この振動特性を適切に表現できる単純な脂質分子モデルを考案し、その集合体の解析を行うシミュレーション法が有効であると考えられる。
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