研究概要 |
物質の力学的あるいは熱力学的な挙動を巨視的に記述する方法は既に確立されていると見ることができる.しかしそれを原子の運動を基礎にして積み上げる場合には多少の問題が残っている.多数の原子の運動を平均化によって巨視的な量におきかえる際の積分領域をどうとるか,またその領域内部での変動の影響を無視することは妥当かどうか,などの問題点である. 本研究ではこの点をメンドメインなる概念を用いて検討し,その小領域内部での諸量の変動も考慮する理論を始めに展開した.これにより,内部の高次変形の影響を考慮した高次物質に対する保存則を導くことができた.高次物質特有の高次応力は,通常の物質における熱流束の一部とみなすことができる.このことと,高次物質におけるエントロピーの関係を見るために,エントロピーの微視的表現をGibbsの式を用いて導出した.ここに高次応力仕事率に関する表現が用いられている点が特徴的である. 高次物質のエントロピーと,通常の物質のエントロピーとの相違を確認するために,分子動力学法に基づく数値計算を行ない,得られた原子の速度に,上で得られた式を適用した.その結果,高次物質のエントロピーは,通常の物質のエントロピーに比べ値が小さくなることを定量的に明らかにすることができた.
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