研究概要 |
ごく最近,ER流体を用いなくても,繊維を植毛した電極により一般的な絶縁性流体に電界を印加することで,ER効果が発現することが千葉大の大坪らにより報告された.本研究課題はこの新しいER効果をフルイドパワーシステムへ応用し,新しい液圧制御弁(植毛ERバルブ)を実現することを目的としている.本年度は,主に植毛電極によるER効果の基本特性解明実験をおこなった.実施結果の具体的内容は以下のとおりである. 植毛電極によるER効果の特性解明を目的に2ポート植毛ERバルブを試作した.バルブは繊維が植毛された高電位電極とグランド電極のみの平行平板電極で構成されている.電極板の大きさは,幅50mm,長さ290mmである.電極間隔は1.5mmである.高電位電極には,直径17μm,長さlmmのレーヨン繊維が8200本/cm2の密度で植毛されている.グランド電極と植毛間には0.5mmの間隙があり,流体はおもにこの間隙を流れる.印加電圧により電極間を流れる流体の圧力,流量が変化する.試作した2ポート植毛ERバルブに作動油を圧送するための液圧回路を構成し,2ポート植毛ERバルブの印加電圧・差圧間静特性,動特性を測定した.その結果,植毛電極によるER効果は印加電圧に対して増加し,印加電圧5kVのとき差圧が15kPa増加することを明らかにした.また,動特性として,印加電圧をステップ状に変化させた場合,差圧が立ち上がり時間5msで応答することを明らかにした.さらに印加電圧に対する差圧の周波数応答実験の結果より,バンド幅100Hz程度の植毛ERバルブを実現できることを明らかにし,フルイドパワーサーボシステムへの応用が可能であることが明らかにした.今後,さらに大きな植毛ER効果が得られる条件について,作動油や植毛繊維など植毛ER効果に関係すると思われる因子を変化させて,実験的に検討する予定である.
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