研究概要 |
氷の凝固核生成に影響を及ぼす交流電場の周波数の目安を予めつける目的で,1MHz以下の周波数領域における誘電損率の既存データをもとにして,均質核生成がおきる臨界核半径が無限大になる条件を古典核生成理論により計算し,効果が考えられる周波数と電界強度を予測した.即ち,凝固核の自由エネルギーとして,電場エネルギーの吸収項を導入し,有限時間後に臨界核半径が無限大になる条件を計算したところ,60kHz近傍で片振幅500kV/m以上の電界強度が必要であることが分かった.実際の効果をより定量的に把握するため,水(-4℃以上;含過冷却水)の誘電損失スペクトルを測定したところ,全ての周波数にわたり,同じ温度の氷の誘電損率より,はるかに大きいことが分かった.以上より,交流電場を凝固核のみに選択吸収させて生成を抑制することは測定周波数範囲では困難であることが分かった. 公表された既存のデータが見あたらなかった1MHz以上を含んだ40Hz〜5MHzの氷の誘電損失スペクトルを,温度をパラメータにして測定したところ,複数のピークが存在し,温度によりスペクトルのピークの位置と大きさが変化することが分かった.特に,3MHz近傍の誘電損失は,低温ほど値が小さく,-40℃近傍では-2℃付近の数倍の値で最も高い周波数ピークをもつことから,凝固相の高速均一昇温に効果があることが分かった.凝固相の電場エネルギー吸収を検証するため,-40℃近傍の氷に種々の周波数の交流電場を与えて,氷の温度履歴から周波数による吸収量を算出した.結果,吸収熱量のスペクトルパターンは,誘電損失から計算されたものと良好な一致を示し,誘電損失による電場エネルギー吸収を実証した.
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