研究概要 |
今年度は量子光学に焦点をしぼり,量子力学系のフィードバックについて考察した.特に,自然には存在せず,純粋に量子力学的な状態といわれるスクイズド状態を生成する量子系をいかに構成するかということに焦点をあて,二つの方法を考察した. 一つは量子力学的に記述される共振器から出力される量子状態(レーザー光) を別の共振器に入力し,この二つの共振器で閉ループを構成することによってスクイズド状態を生成する望ましいシステムを構築する方法である.この考察によって量子光学系のフィードバックの方法が定式化され,量子力学における重要な問題であるスクイズド状態の生成が制御理論におけるH^∞制御問題と関係付けられることが示された. もう一つは,共振器から出力されるレーザー光に測定を行ない,その測定結果に基づいて共振器内の物理的なパラメータを変化させる方法である.これは前者の方法と異なり,測定による量子状態の変化を考慮しなくてはならない.このために,まず測定による共振器の量子状態の変化の記述を定式化した.そして,その測定のもとでの量子状態の時間発展を用いて測定結果を量子系にフィードバックする手法を定式化した.これにより測定器を介した閉ループを構成することができ,前者とは異なる方法で再び量子系の制御が制御理論の問題と関係付けられることが示された.
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