形状記憶合金パイプに光学的に熱エネルギを加えることで高速加熱しオーステナイト相変態を誘起させて出力を取り出す新しいオプティカル・アクチュエータの開発を行った。形状記憶合金の応答は合金までの熱輸送にかかる時間と、合金自身の相変態の時間に別れるが、光加熱により前者の時間を最小にすることができる。後者の時間は、形状記憶合金を熱湯に投げ入れるときの瞬間的な応答からわかるように極めて短く、光加熱により高速な応答が得られると期待できる。開発した形状記憶合金オプティカル・アクチュエータは細いパイプ形状を同心状に組みあわせ、その間隙に光ファイバーを挿入した構造のものである。光ファイバーにはKTP/YAGレーザーなどの高出力(10〜20W)レーザーを通し、高密度の光エネルギーとして形状記憶合金に供給した。これによってパイプは急速に加熱され屈曲した。また液化CO_2ガスを間隙に送り、気化熱によって急速に冷却することによって急速加熱と急速冷却を可能にすることができた。問題点としては、光ファイバーからの光が集まるため局所的な加熱になったため、光を分散させて広範囲の加熱をおこなうことが重要である。またガス冷却では冷却温度が一時的に-20℃にもなるため、予期しなかったマルテンサイト変態が生じた。光とガスを用いた加熱冷却の温度範囲を把握して形状記憶合金の材料設計を行うことが必要である。これらの成果に付いては98年度日本ロボット学会学術講演会で一部発表した、また日本ロボット学会誌での学術技術論文としての掲載が決定している。
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