プラズマ媒質として粉体を用いると、気体だけではなく様々な固体を媒質として用いることができるようになるため、従来と比べて媒質選択の幅が格段に広がる。このため、波長選択幅の広い軟X線源や機能性薄膜形成などの材料技術への応用が期待される。そこで、粉体からプラズマを生成するために必要な粉体を制御する技術の確立と、絶縁破壊の初期段階の現象を明らかにすることが重要である。本研究では、放電領域に粉体を供給するための装置の開発と、粉体の数密度や速度の測定を行い、供給法に関する定量的な評価を加えた。製作した粉体供給装置は、粉体を高電圧により静電加速するもので、印加電圧により粉体供給量を変化させることが可能なものである。この粉体供給装置を用いることにより粉体数密度、粒径、材質を変化させて大気中の絶縁破壊電圧を調べ、絶縁破壊の初期段階の現象を明らかにした。その結果、放電領域に粉体を一様に供給することに成功し、粉体数密度は10^1〜10^8m^<-3>となった。これ以上は密度が飽和する傾向が見られた。この理由は粉体の数が増えてくると、加速電極間で粉体による電界遮蔽効果が現れ、電極上に存在する粉体にかかる電界が小さくなるためと考えられる。また、周囲に気体媒質がある場合に粉体のパラメータを変えて、大気中の絶縁破壊特性を測定した結果、粉体数密度、粒径、種類、極性には依存しない結果が得られた。このことから、粉体による電界倍増効果が、絶縁電圧低下の原因と考えられる。さらに、粉体存在下での放電からの可視光放射を分光測定した結果、粉体物質の気化が確認された。またそのタイミングは、空気の絶縁破壊の後であり、粉体は空気の絶縁破壊により生じた電子やイオンなどによって気化すると考えられる。
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