研究概要 |
励起子とフォトンの相互作用は,例えば半導体微小光共振器における励起子ポラリトンのラビ分裂など興味深い物理現象を引き起こす。しかしこれまでの研究は励起子ポラリトンの分散に関する研究が中心で,光場の量子化の影響,特に励起子とフォトンの相互作用が強い場合の実験的な検討は進んでいなかった。当該研究は,特に光を三次元的に量子閉じ込めした光ドットとでもいうべき半導体構造の作製と,この構造で励起子とフォトンが共鳴して強く結合した場合の発光過程にまとを絞って研究を進める。特にII-VI族半導体のZnSeの例では,GaAsの4meVに比べ,励起子束縛エネルギーが18meVと大きい特徴を持つ.このような大きな束縛エネルギーは,対応する大きな振動子強度により励起子-フォトン相互作用の増大を誘起する。したがって光場の量子化とも相まって,発光再結合レートの増大並びに抑制などの制御が期待でき,高速の発光ダイオードが実現できる可能性がある。 本年度は,まず光場の3次元量子閉じ込め系の作製を試みた。このために当該研究者らがこれまで研究を進めてきた原子間力顕微鏡と電子ビームを結合したリソグラフィ技術と選択成長技術を組み合わせて,ZnSによるピラミッド構造の,いわゆる光ドットを作製した。そのサイズは底辺0.8ミクロン,高さ〜0.4ミクロンと光学波長程度に小さくしてある。光学評価としては100倍の対物レンズにより一つのドットを選び,その反射スペクトルを測定した。その結果,共振Q値100〜300と比較的鋭い共鳴が波長400nm付近に観測され,微小な光共振器として働いていることが確認された。その共振ピーク値も計算値と合理的な一致を示した。今後,このピラミッド構造光ドットに発光層を挿入し,発光過程への光場量子閉じこめ効果を検討していく。
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