本年度は、市販の高齢者用電動車をベースに、自律型移動ロボットシステムの開発を行ってきた。研究の進行状況は以下の通りである。 ロボットに搭載するセンサ部の開発を、視覚障害者のための歩行支援システムに関する研究の一部として行った。開発したセンサシステムは、1つの超音波発信器を中心に、その周囲(上下左右)に4つの超音波受信器を置く構造にした。特定の目標物体に対する方向と距離を同時計測することが可能なシステムである。このセンサシステムをロボットに搭載することにより、ロボットは目標物(人)との距離を常時計測することができる。センサ部は、ステッピングモータにより上下左右に旋回し、特定の目標物へ常に超音波を照射し続け、追跡する機能を有する。本研究では、このセンサシステムにより計測されるロボットと人との距離を指標に、人の行動を拘束することなく、また、人にストレスを与えずに、人の行動に追従する行動、いわゆる「人に寄り添う」行動の計画手法を検討していく。 移動ロボットシステムの開発としては、市販の高齢者用電動車にノート型パーソナルコンピュータ、上記のセンサシステムを搭載し、自律走行へ向けて開発を進めている。本システムは市販車がベースになっているため、人の搭乗も可能である。パーソナルコンピュータにより走行を完全に制御していることから、障害者向け電動車として障害の状況に応じた転用も容易である。今後、本システムに通信機器を搭載し、多角的に環境情報を収集する機能を付加するとともに、複数ロボット間で環境情報を共有する協調行動の計画へと繋げていく予定である。
|