地盤や岩盤はさまざまな複雑な要素からなっており、材料学的にも力学的にも最も取り扱いの難しいものである。しかし、最近の「複雑系の科学」の導入は、このような複雑系を理論的に解明しようというものである。今回はカオス理論による岩盤不連続面の幾何学形状解析に関する研究に的を絞った。本研究の目的は、岩盤工学へのカオス理論の適用の可能性を探ることであるが、今回、特に焦点を当てたのは、不連続性岩盤表面形状のフラクタル表現からカオス理論による解釈と、岩盤不連続面の分布(密度や空間位置)をカオスで表現し、工学的指標として利用できるかどうかの検討を試みた。こうした点をふまえながら、文献整理や理論の集積を試み、新しい解釈を加えて、カオス理論による岩盤不連続面の幾何学形状解析に関する研究の成果を上げることをめざした。 今年度は、カオス理論による岩盤不連続面の幾何学形状解析に関する研究を遂行するために、文献整理、理論の検討と構築さらに具体的なプログラム開発を行うため、以下のような研究計画・方法を立案する。 岩盤の不連続面生成のダイナミックスは地質学的に、かつ力学的に非常に複雑な過程を経ている。この複雑さの把握にカオス理論を適用するために、他分野でのカオス理論の適用例の整理、既存の理論の検討、フラクタル理論との関連などについての議論を行った。研究の主体を大西が担当し、大津、田中との議論を重ねた。 大津が中心となって、不連続面データの確率論的な解釈をフラクタル理論から見直し、カオス理論への展開を検討する。 田中は、不連続面データの収集と解析プログラムの作成を行った。既設の岩盤表面凹凸計測装置や画像解析装置を使って、実際の岩盤の不連続面幾何学情報を得た上で、上記の研究成果を反映した解析プログラムを作成した。
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