研究概要 |
本研究は,海洋波浪のエネルギーの抽出および利用を目的とするものであり,(1)波浪の往復運動を一方向回転力に変換する新型波力水車機構および(2)この回転力を利用して圧縮空気の製造を行うリニアクランク式空気圧縮期を新たに発明・製作し,それらの結合をおこなうことによって,自動的に波浪エネルギーから圧縮空気を製造する装置の開発を目指すものである.(1)の波力水車では,ワンウェイクラッチ付きの歯車を2個と回転反転用の歯車を1個用いることにより,波の峰側と谷側で半周期ごとに方向が反転する水の運動力を一方向回転力に変換することに成功した(特許申請中).また回転数の増加には,半径の異なる歯車を適宜付加すれば,容易に目的が達せられる.(2)のリニアクランクは,ハイポサイクロイド理論を用いた直線運動方式のクランク機構のことであり(特許は確定している),スラスト力が生じない機構であるため,シリンダー摩擦および横振動がほとんど生じない仕事効率の極めて良いものである.本研究の結果,(1)および(2)の2種類の機構の試作を終え,十分実用化が可能であるとの結論を得ることができた. 現在,これらの両機構を結合した波力エネルギー抽出装置の模型の試作を行い,実験室における波浪を用いた圧縮空気の製造実験を実行中であり,(1)と(2)の寸法スケールのマッチングが良好になれば,自然エネルギーを利用する自動的な海洋エアレーション装置を完成することが出来ると考えている.なお本装置は,潤滑油や油圧ポンプを全く使用しないものであるため,環境保全という面から,従来の油圧ピストン方式よりも極めて優れたものであり,またエネルギー伝達効率は,ロスの小さい歯車によることから,従来の空気タービン式や油圧ピストン式よりもはるかに効率が良いと考えられる.次年度は,本成果をもとにして,一層実用的な波力エネルギー変換装置を試作・提供する予定である.
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