研究概要 |
従来の交通行動モデルにおいては,集計モデルはもちろんのこと,非集計モデルにおいても,対象地域を複数のゾーンに分割し,個々のゾーンをトリップエンドとするゾーンシステムが広く用いられてきた.ゾーンシステムがこれまで用いられてきた大きな理由として,計算機の処理能力をそれほど必要とせず,比較的容易に分析に用いることが可能であったことが挙げられる.しかしながら,現在では,計算機能力が急速に向上し,そのような面からの限界は無くなったと考えられる.反対に,ゾーンシステムによる個々のトリップの測定誤差が交通行動モデルの精度の向上を阻んでいる点が問題視されるようになってきており,新たなトリップの測定方法および解析方法が求められてきている. 本研究の目的は,トリップエンドとして平面座標システムを用いた交通行動モデルを構築することであり,そのための基礎的な分析として,目的地選択行動に対して平面座標システムを用いたモデルの構築を行い,アンケート調査に基づく実証的な分析を行っている.はじめに,平面座標システム上で個人の交通行動を捉えるためのGISデータベースを構築した.次に,地図を用いたアンケート調査を実施し,調査結果をGISデータとしてコーディングした.モデルの構築に際しては,選択肢が無限集合となることから,選択肢集合特定のための目的地認知モデルを構築した.さらに,特定された認知空間を対象に,地理平面上の仮想的なメッシュを選択肢とする目的地選択モデルを構築した.推定結果より,構築した目的地選択モデルが非常に高い適合度を持つことを確認した.
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