研究概要 |
車両の錯綜の発生に起因する交通事故に対する効果の高い安全対策を考えるには,ドライバーの意思決定の相互依存性に起因する交通事故の発生メカニズムを説明できる再現性の高い交通挙動モデルを開発する必要がある.本研究では,特に,流入車と本線車が頻繁に錯綜する高速道路流入部に着目し,流入部を走行する流入車と本線車の各ドライバーの意思決定を,非協力ゲーム理論に立脚した行動モデルとして定式化した.そして,本モデルの均衡解分析より,Time to Collisionに代表されるドライビング環境が,各ドライバーの意思決定および結果として流入部に発生する流入・避走等の交通現象にもたらす影響を明らかにした.さらに,各ドライバーの利得とドライビング環境の関係を特定化することにより,流入部全域において流入・避走行動が発生する時点・地点を明示的に表すことのできるモデルに拡張し,流入部全域での「車両挙動」を説明できるモデルに拡張した.また,既存の観測データを用いてモデルの現象再現性を吟味し,モデルの妥当性を確認した.本モデル化により,それぞれの車両のドライビング環境によって,高速道路流入部に発生する流入行動や避走行動の変化,さらにはこれらの行動の組み合わせである交通現象の発生と,それらが生起するタイミングが説明できることになる.したがって,避走行動を考慮した車線別利用率や追越し車線交通量が及ぼす影響等が明示的に考察できるようになり,より安全で快適な高速道路流入部の設計や交通制御・ITSのデザイン等に寄与するところが大と考えられる.
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