研究概要 |
本研究は,錯綜状態下にある複数のドライバーの意思決定の相互依存性・戦略性を明示的に取り扱い、より説明力の高い交通モデルと開発した.その際、複数のドライバーが互いに影響を及ぼし合いながら自分の運転行動を決定するという一種のゲーム的状況にあると考え,その行動を非協力ゲーム理論により記述した. 研究の主な成果として,以下の3つが上げられる.まず,双方のドライバーの運転行動を2人非協力ゲームによってモデル化し、周辺車両との衝突危険度で表現された運転環境の時間的変化による均衡解の変化として走行状態の移行を説明し、各ドライバーの流入行動や避走行動の変化を明らかにした.さらに,観測データによるモデルの検証を行い,ケーススタディを通して提案したモデルが比較的高い現象説明力を有していることを確認した. 2つ目として,開発したミクロモデルにより記述される車両の挙動を集計することによって、交通量等の計画変数から流入位置分布等のマクロ交通特性を推定する方法論を開発した。また,合流ノーズ端より上流側で生起する先行避走行動をモデル化し、流入部解析の基礎条件となる車線利用率を内生的に算定する方法を提案した. 最後に,ドライバー相互間の遭遇により伝播する危険認識の動学的推移と危険回避行動の変化に着目し、事故危険度との関連性をモデルにより分析した.特に,ロータリーを例にとり交通ルールの認知度が異なる複数のドライバーが遭遇を繰り返すうちに認知度がどのように推移するかをゲームモデルで表し,ロータリー走行時の安全性と円滑性に及ぼす影響を検討した.また"パッシング"という慣習的合図をとり上げ、時間の経過に沿ってドライバーが有する認識の変化を分析した。さらに,異なる態度・選好を有するドライバーが混在する社会において、いかに交通事故が発生するかをモデル化し、事故コストの負担方式を適切に設計することによる安全性向上の可能性をゲーム理論を用いて分析した.
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