平成10年度は、清掃工場の建築デザインの特徴とその設計主旨に関して全国的な実態調査を行った。実施した調査の内容と、得られた成果の概要は以下の通り。 1. 基礎資料の収集とデータベースの構築 調査対象とした、1985〜1996年に竣工した近年の大規模清掃工場122施設について、広報用資料(パンフレット)、施設の外観写真、主な設計図面、諸元(処理能力、建築規模、プラント形式など)に関する情報を収集し、清掃工場の建築デザインに関する基礎的なデータベースとして整理を行った。 2. 具体的な建築デザイン手段とその設計主旨項目の抽出 広報資料のキーワード分析から、11のデザインの主旨項目が得られ、施設の外観写真と図面の分析からは、建築を構成する18の要素ごとに建築デザインの手段項目を得た。 3. 建築設計担当者に対するアンケート調査の実施 各施設の設計担当者を対象にアンケート調査を行い、結果をもとに物理的な建築デザインの手段と背景にあるデザインの主旨との関係性について、代表例を抽出して個別に分析を行うことで特徴を明らかにした。 4. 建築デザインの設計主旨に関する傾向分析 建築デザインの主旨について、時間推移による傾向分析を行った結果、近年の建築デザインに対する考え方の潮流として、ごみ処理の問題、即ちごみそのものや従来の焼却処理施設が持つマイナスの印象を否定する方向性を基にしながら、「地域性」、「シンボル性」、「親しみやすさ」などの、廃棄物問題とは別の価値観を積極的に表現しようとする傾向が現れており、建築部分の役割が、炉の上屋としての機能的な役割だけでなく、近年では意匠的な表現の媒体へと変化しつつある実態を明らかにした。
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