溶液中に銀イオンとアンチモンイオンを混在させ、銅板上に2種の金属を電気化学的に析出させると、唐草模様の様な規則構造が自然に発生する。2D光電子分光により析出表面を観測すると、銀とアンチモンがお互いに固溶せずに析出して空間模様を作り上げていることが判った。この反応には、電極表面を舐める電解質流体の流れが必須である。通常、反応の進行と共に、電極近傍の電解質のイオン濃度が減少するため、密度不安定が発生し流体の運動が始まる。10Tの強磁場中でこの反応を進めると、パターンの進行方向が無磁場中に比べて90度回転した。これは、磁場から流体がローレンツ力を受け、流体の運動方向が自然対流の方向と直行する方向に発達したためである。また、銅電極上のアンチモンの金属析出の核発生エネルギーが成長エネルギーに比べて、150meV以上大きいことを実験から明らかにした。この事実と、流体の運動を考え併せて、自己組織化機構を銀アンチモンの2重拡散場の時間変化と、2次元金属核成長の拮抗から説明することが出来た。
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